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金を通して世界を読む


豊島 逸夫著 日本経済新聞出版社


 「金(ゴールド)」のプロが、“金の世界から見ると世の中の景色はどう見えるか”をテーマに書かれた本をご紹介します。著者の豊島逸夫氏は、スイス銀行のゴールド・ディーラー、非営利の金の国際機関であるワールド・ゴールド・カウンシル日本代表を経て、現在は豊島逸夫事務所の代表を務める、金の国内第一人者。


 “金は世界情勢を映す鏡のようなものだ。グローバルな経済・政治の動きが凝縮され、詰まっている。だから、その中に身を置くと、市場の潮流が肌で感じられる。” との豊島氏の発言も、この本を読んだあとなら「確かに」と自然と腑に落ちます。


 この本の面白いところは、ただの経済や投資に関する解説本ではないというところです。それは、著者の実際の体験を元に、著者独自の切り口で、金の価格の変動に関連付けて、グローバルな視野で世の中の出来事の背景を考察しているからでしょう。そして、過去の出来事の検証だけでなく、未来に関しても、豊島氏はこの本の中で予測しています。


 この本は、2008年に出版されていますが、当時はサブプライム危機に世界が直面した時期でした。サブプライム危機の反省を踏まえて、ポートフォリオによるリスク分散や「有事の金」と呼ばれる安定資産である金投資などのリスクヘッジ(リスク管理)の考え方は、事業経営などとも共通する概念であり、経営者にとっても参考になるはずです。


 また、著者独自の切り口である“「有事の金」の本当の意味”という章のくだりは秀逸です。それ以外にも、金市場のプレーヤーの紹介や日本をはじめとした世界の国々の金を動かす思惑に関する独自の考察は、現在の世界情勢を見る上で、とても参考になる部分です。特に、“ナショナリズムの匂いのする通貨を避けるロシア”と題した章は興味深く、ウクライナ侵攻に対する世界各国からの経済制裁に対して、ロシアがドルをはじめとした外貨不足に

陥り、デフォルトするのではないかとの懸念に対するアンサーのようになっているのです。


 さらに、これから(2009年以降)の金を見るポイントを紹介しつつ、豊島氏が将来予測をしている章では、現在の石油価格の高騰と照らして、金価格との相関・非相関に言及し、各国中央銀行の動向や新たな世界秩序の予測など、今読めるからこそ、さまざまな答え合わせができます。


 “米国の公的金保有量は八千トン以上。しかも、ドルという「対外準備資産」をその気になればいくらでも発券できる立場にある。

 一方、中国の公的保有金はわずか六百トン、対外準備資産に金が占める割合はわずか一%程度。あとは米国の借金の証文を抱えるだけである。

 二千年の歴史を持つ価値を世界一多く抱える米国と、せいぜい二百年の歴史しかない価値を大量に抱え込むことになった中国。この二か国は「仮面夫婦」の関係を続けるほかないのではないか。


 投資の知識や経験がない方でも、興味のある章から読むことができ、すっと入り込める構成になっています。

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