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ライフスパン 老いなき世界


ライフスパン 老いなき世界 デビッド・A・シンクレア 東洋経済


 世界20か国でベストセラーになった本書のテーマは「老いない身体を手に入れる」。著者はハーバード大学教授で老化研究の世界的権威。老化は避けて通れないものではなく、老化そのものが1個の疾患であり、治療できるものだといいます。


 現代医学は医学上の問題に1つ1つ対処するという姿勢の上に築かれており、ある病気の治療が別の病気になる要因を増やしてしまうこともあります。ひとつの病を食い止めたからといって平均寿命が大きく延びるわけではありません。


 “ハードルを1つ取り除いたところで、行く手の危うさが減るわけではない。だからこそ、個々の病気を治療するという現行の対処法ではうまく行かないのである。高額な医療費がかかるうえに、健康寿命を大幅に延ばすうえではまったく役に立たない。私たちに必要なのは、ハードルをすべて取り払ってくれるような医療だ。”


 本書ではかなりの頁数を割いて老化のメカニズムを科学的に深く掘り下げていきます。体の設計図であるDNAは複製されるたびに何らかの形で損傷しますが、自然放射線や環境中の化学物質、レントゲンやCTスキャンなどによってもダメージを受けます。私たち生命体はこの損傷からDNAを修復する仕組みを体内に持っているから長く生きられます。著者この仕組みを「サバイバル回路」と呼び、そこで重要な修復作業を行う遺伝子「サーチュイン」に注目します。サーチュインが日々DNA損傷を修復してくれているから私たちは生命を維持できているわけですが、問題はこのサーチュインが対応しきれないほどたくさんの箇所で損傷が発生した場合です。この状態が老化を進行させることになり、各種の疾患を発生させる原因となります。つまりサーチュインの混乱を防ぐことができれば老化は止めることができるということです。さらにはサーチュインに適度な負荷を与え、トレーニングすることで若返ることも可能だと話は展開していきます。


 サーチュインに適度な負荷を与える方法は3つ。①食事の量や回数を減らすこと、②適度な運動をすること、③身体を寒さにさらすこと、です。


 “動物実験でサーチュインのプログラムをはたらかせるカギは、カロリー制限を通して体を「ぎりぎりの状態」に保つことのようだ。つまり、体の健康な機能を保てるくらいの食物は与えながらも、けっしてそれ以上にはしないということである。これは理にかなっている。そうすればサバイバル回路が始動し、機能を高め、環境が厳しいときにも生命を維持し、病気や体の劣化を防ぎ、エピゲノムの変化を最小限に留め、老化を遅らせるのである。”


  “最近の研究によれば、週に4~5マイル(約6.5~8キロ)走るだけでも、心臓発作で命を落とすリスクが45%減り、全死因死亡率が30%下がることが示されている。”


 “冬にTシャツ1枚で、ボストンのような街を早足で歩けばいい。褐色脂肪組織をつくるペースを上げるには、寒いなかで運動するととりわけ効果が高いようである。夜通し窓を1枚だけあけておいたり、眠るときに厚い毛布を使わなかったりするのも1つの手かもしれない。”

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